『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』などを執筆した小説家。
小説
『細雪』
いまの世の中では殆ど見かけられなくなったと思われる美しい4姉妹の、妖しい息づかい、微妙な相剋、宿命的ともいえる孤独感が、関西独自の風習や、季節の移り変りのなかで見事に描く。谷崎文学の頂点として昭和文学史を華やかに彩る、名作長篇初の豪華全一冊本。
万城目学
『細雪』で、三女雪子の口癖「ふん」が、自分もよく使う、「ふん」と「うん」との間の、平仮名で表現しにくい応答の声を表現していると気づいたとき、なんだかショックだった。わけもなく、すごいと思った。たぶん、この頃、小説を書き始めた。
出所:ザ・万遊記
『花神』
周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。
万城目学
大学入学とともに、家を出て京都に下宿することになったとき、大阪の実家から持ち出した本は、すべてのジャンルのなかで、この『花神』だけである。
出所:ザ・万遊記
【同様にこの本を紹介していた著名人】
東野幸治
『本覚坊遺文』
本覚坊の手記の形で利休自刃の謎に迫り、狭い茶室で命を突きつけあう乱世の侘茶に、死をも貫徹する芸術精神を描く。文化勲章はじめ現世の名誉を得た晩年にあって、なお已み難い作家精神の輝きを示した名作。
万城目学
私は井上靖が好きである。今でも好きな歴史小説を三作挙げるなら、利休の死を描いた『本覚坊遺文』に即座に一席を与える。
出所:ザ・万遊記
『額田女王』
大化改新後の激動する時代、万葉随一の才媛で「紫草のにほへる妹」とうたわれた額田女王をめぐる大ロマン。朝鮮半島への出兵、蝦夷征伐、壬申の乱……と古代国家形成のエネルギーがくろぐろと渦巻く中で、天智・天武両天皇から愛され、恋と動乱の渦中に生きた美しき宮廷歌人の劇的で華やかな生涯を、著者独自の史眼で綴り、古代人の心を探った詩情ゆたかな歴史小説。
万城目学
井上靖の文章には不思議な癖がある。何というか、階段を一段飛ばしで上っていくような感じ。普通なら、続く描写や説明がありそうなところをポンと飛ばす。しかし、読み手に不足感は与えない。ちゃんと目指すところへたどり着く。これぞ「簡素にして遺漏なし」というやつか。十五年近く新聞記者を務め、極限まで文字を削る訓練をした賜物なのか。
出所:ザ・万遊記
『屋根をかける人』
明治末期にキリスト教布教のために来日したアメリカ人建築家、メレル・ヴォーリズ。彼は日本人として生きることを選び、 終戦後、昭和天皇を守るために戦った――。彼を突き動かした「日本」への思いとは。
今まさにノリノリの門井慶喜氏の新刊『屋根をかける人』の帯にコメント寄せています。建築家ヴォーリズの歩みを丁寧に描いた一冊です。先日この本の取材中にお会いした門井氏は、秘蔵のレトロ・メンソレータムグッズに囲まれていました。メンソレータムもまたヴォーリズが日本に持ちこんだものです。 pic.twitter.com/Z1kawodPyY
— 万城目学 (@maqime) December 16, 2016
『流星ひとつ』
流星のように消え去った藤圭子の「真実」を描く奇跡のノンフィクション。
沢木耕太郎さんの『流星ひとつ』を読みました。いい。この本はとてもいい。
— 万城目学 (@maqime) October 14, 2013
エッセイ
『まくらばな』
桂歌丸師匠からもらったグリーンピース。亡き父・柳亭痴楽師匠にちぎられた耳たぶ。心を通わせた恋人、シェリーとの悲恋物語。深夜に漁った自動販売機で大金持ち!―などなど父、家族、友人、師匠、仲間たちとの抱腹絶倒の仰天エピソードが満載。
真打昇進されたばかりの柳亭小痴楽氏の初エッセイ本『まくらばな』の帯を書きました。お世辞抜きにおもしろいです。確かなエピソード記憶の強さと話の幕引きのうまさ。天性なのか噺家だからなのか、絶品の歌丸さんエピソードでも、その瞬間の歌丸さんの表情や目つきが見えてくるから不思議です。ぜひ! pic.twitter.com/pvdD2Jyzev
— 万城目学 (@maqime) November 14, 2019
『この間。』
東野コージ初のエッセイ。日常に偏見と先入観を。独断を持って、人間模様を切り取るブログ『この間。』一年間(2011年12月~2012年11月)の集大成。
来月4日に刊行される、東野幸治さんの『この間。』というエッセイ本に帯のコメントを書きました。文章を読みながら笑うって、本が好きな人間にとって、いちばんしあわせな瞬間ではないか、と思うこともあるのですが、くやしいくらいに笑ってしもうた一冊であります。
— 万城目学 (@maqime) April 19, 2013