マンガ
『泥濘の食卓』
田舎町のスーパーで働く「深愛」は、パート先の店長と不倫関係にあった。何のとりえもない自分に優しくしてくれる店長が大好きな深愛。しかし突然、別れを告げられる。
押見修造
熱を込めておすすめします。一読して、作者の伊奈子さんはとてもよく「見ている」方だなと思いました。
田舎のラブホテルの壁紙、寂れた田舎の道端、スーパーのトイレの張り紙、キャラクターそれぞれの顔や服装。全てのディティールがひたすら丁寧に描かれていて、モブのひとりひとりに至るまで生々しさがあります。
こんな人いるなあ、いたなあ…いや自分かも…というオンパレードです。そこから立ち上がってくる人間の不可解さ。得体の知れなさ。人間はみんな言っていることとやっていることが違くて、その違いの中に本質が浮かび上がるのだ、ということをまざまざと描き出していると感じます。
凄みのある漫画だと思いました。
出所:Twitter
『フールナイト』
ぶ厚い雲に覆われ陽が差さなくなった遥か未来の地球。植物が枯れ酸素も薄くなった世界。しかし人類は、人を植物に変える技術を開発し、わずかな酸素を作り出して生き延びていた。
人として生きるか、植物として生きるのか。人々は選択を迫られる。
押見修造
格差と絶望の中に咲く、魂の逃げ場として植物化した人間たち。その筆力に嫉妬した。
出所:本の帯
『14歳』
環境破壊による人類滅亡、危機的状況を乗り切ろうとする子供たちの奮闘、親子の絆と別れといったテーマを圧倒的な迫力で描く。
押見修造
(ちゃんと他人と関われるようになったのは)上京して大学に入ってからですね。なんといっても初めてちゃんとした彼女ができたことが大きかった。
彼女も少し変わった人で、『14歳(フォーティーン)』(漫画家・楳図かずおの代表作)が読みたいって言って僕の家に来たのがきっかけです。それまで僕は、「こんなサブカルなものを知ってる自分は偉い」と思っていたんですが、彼女から「おまえ、恥ずかしいな」と言われて。
小説
『しろいろの街の、その骨の体温の』
女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。
押見修造
思春期の地獄について、女性側から描いた小説。社会や街に対する呪いの感覚、性と自意識、成長。「身体」がすごく意識されることが、男の地獄との違いなのかなと思いました。
僕はこの主人公のように自分の身体を認められていない、羨ましい。
出所:三省堂書店「著名人選書フェア」
『グミ・チョコレ-ト・パイン』
あふれる性欲、とめどないコンプレックス、純愛のあいだで揺れる青春。大槻ケンヂが熱く挑む自伝的大河小説。
押見修造
学生時代に読み、これもまるで自分の内面が書いてあるように感じました。
「自分は何者にもなれないまま一生を終えるのでは」という不安を受け止めてくれたこと、「こんなふうに人を好きになりたい」と思わせてくれたことが思い出深いです。
出所:三省堂書店「著名人選書フェア」
『青春と変態』
主人公の趣味はトイレでの覗き行為。今年も所属するスキー部では県内の女子校との合同合宿があり、雪山のロッジへ。もちろんその目的は「トイレ覗き」だったが——。
押見修造
「変態」である男子高校生の話。その心理描写は鏡で自分を写されているようでした。とくに男性にとって、芸術の本質とはここに書かれているようなものなのかもしれないと思います。
出所:三省堂書店「著名人選書フェア」
『ドグラ・マグラ』
精神医学の未開の領域に挑む、探偵小説の枠を無視した奇想小説。
押見修造
中学生時代に読んでいた本として紹介。
『犬神博士』
大衆芸能を抑圧しようとする体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを、緻密で躍動的な文体で描き出す、夢野文学傑作。
押見修造
(高2の)修学旅行の夜に、『犬神博士』(実際の事件を元にした夢野久作の小説)のエピソードをアレンジした怪談を話したら、けっこう盛り上がりまして